
ビニ本や裏本には和服の女性がときどき登場します。
頻繁ではなく、思い出したかのように登場するのですが、
私はこれが、1980年代当時からずっと不思議でした。
和服を好む層が一定数存在していて、その人たちに向けたものと思っていました。
私は、“その人たち”のひとりではありませんので、
和服の女性が登場しているビニ本や裏本には触手が反応しません。
理由はいろいろとあります。
まず、和服を着るとどうしても年齢が高いように見えます。
和服自体が時代がかった服装であることと、
年齢が40代、50代とかになると一部の女性が好んで和服を着る傾向があることも、
関係しているのかもしれません。
若い娘さんが振袖を着ている姿は、華やかで若さにあふれていますが、
洋装のほうが魅力的に見えるのに、なんでわざわざ和服を?
という疑問が浮かび、そもそも和服である必要がないと思ってしまいます。
つまりは、私が和服にフェチ的な要素を見出していないということだろうと思います。
逆にいうと、和服にフェチ的な要素を感じている人たちは一定数いるわけでして、
前述したように、その人たちに向けて、和服のビニ本や裏本はつくられていると思っていました。
和服は、とくに女性の場合は、洋服に比べて脱ぐのも着るのもめんどくさいです。
あえて和服を選択する理由は、和服好きなユーザーがそれなりの数存在するとしか思えません。
しかし、私の周りを含めてですが、“和服の女に性的魅力を感じる”という話は、
これまでにあまり聞いたことがありません。
つまり、浴衣や振袖もそうですが、
和装はだいたいのところ女性の側が希望して実現されているのだと、私は思っています。
ところで、昔のアイドル雑誌やエロ本もそうですが、
夏のみ水着を来たモデルが登場していましたし、年末年始のみ和装のモデルが登場していました。
現在のように雑誌で年中ビキニを見られることはありませんでした。
雑誌に季節感がありました。
というわけで、ビニ本や裏本の和装も、もしかしたらそのノリではなかったかと思っています。
ちなみに、モデルが和服を来たビニ本や裏本というと、
多くのマニアが“田口ゆかり”を思い浮かべるのではないかと思います。
『増刊オレンジ通信 VOL.3』(1986年、東京三世社)に、
田口ゆかりのちょっとした特集が掲載されています。
全部ではありませんが、
1985年夏頃までの、裏本、ビニ本、裏ビデオの出演作が載せられていました。
裏本については、「姫初め」「京の舞」「夏祭り」が和装です。
ただし、「夏祭り」はお祭りの格好で、いわゆる“着物”ではありません。
裏ビデオは6作品が紹介されているのですが、そのうち4作品に和服が登場します。
そのうちのひとつ、
「ザ・キモノ」は、海外輸出向けハードコアと称されていることはよく知られています。
裏本に関しては、
着物姿に定評ありといわれた田口ゆかりにしても違和感がありまして、
とくに「京の舞」は、高島田のカツラが大きすぎて、全体的なバランスがとても悪く見えます。
一方、映像では、通常の時代劇のように違和感がありません。
田口ゆかりに関して突っ込んで書いていきますと、
多岐にわたり過ぎて、底なし沼に入っていき出られなくなる可能性が高いですので、
軽く触れるだけにしますが、
私が言いたかったのは以下のふたつです。
ひとつは、海外に向けた“和テイスト”のアイコンとして和服が使用されていること。
もうひとつは、
和装イメージが比較的強い田口ゆかりにしても裏本の和服姿、とくに高島田は違和感があること。
まとめると、
どうしてわざわざビニ本や裏本で、モデルが和服にならなくてはいけないのかについて、
やはり制作側がノリでやっている側面が強いような気がします。
あと、ごくまれにですが、尼さんの服装の裏本がありますが、
あれも私の感覚では、理解に苦しむところです。
ところで、また話は少し飛んでしまうのですが、
創成期の裏本のタイトルについて、もしかして関連するのかなと思って以下に列挙しました。
「金閣寺」「法隆寺」「ぼたん」「開運・東照宮」
「銀閣寺」「りんどう」「紅薔薇」「浅間」「信濃川」「黒部渓谷」
改めて思いましたが、どうしてこんなにも“和テイスト”なのか。
固有名詞が多いだけで、それを強引に和テイストというのはいかがなものか…。
そんなツッコミもあるかもしれません。
とはいえ、古臭い感じがするのは事実ですし、
以下で書いています、最盛期に向かう裏本のタイトルと比べれば、
“和テイスト”は強いといえるのではないでしょうか。
奥出哲雄氏がかつて書いていますが、
1983年(昭和58年)以降は、本番ファック本が裏本の主流となり、
並行してルックスの良いモデルが業界に流れ込んできました。
その頃に人気だった裏本のタイトルが以下です。
「そよ風」「ラ・セゾン」「太陽がいっぱい」「薫」「ダイナミック」「優しく片思い」「マリア」
創成期の裏本とは明らかにテイストが違います。古臭い表現ですが、ポップで明るいです。
逆にいうと、創成期の裏本のタイトルは暗いです。
加えて、“和テイスト”なのが任侠イメージと親和性があり、
結果的につながって、ライトユーザーは手を出しにくい雰囲気もあります。
ただし、上記にあげた裏本はタイトルを比較しただけですし、
裏本の中身に和服を着たものはありません。
また、タイトルに関することはビニ本にはあてはまりません。
創成期の裏本と同時期に発売されていたビニ本は、そこそこポップな感じのタイトルだからです。
今回取り上げました「月光」は裏本ではなくてビニ本ですので、
そこでまた立ち止まってしまうのですが、
ビニ本も裏本も互いに影響し合いながら、市場を拡大していきましたから、
まったく無関係ではないといえる側面もあると思います。
かなり長くなりましたので、とりあえずまとめますと、
モデルに和服を着させたのは制作側のノリだと思うと述べました。
そのノリがどこから来たのかといえば、やや強引ですが、
時代を経て薄まりながらも創成期から続いている“和テイスト”ではないかと思います。
和服から、かなり広範囲に話が広がってしまいました。
ビニ本「月光」の内容については次回、書いていこうと思います。
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