以前、
「淫花 obscene picture」(アリス出版+エルシー企画+土曜出版新社)を取り上げました。
今回取り上げた「奇妙な果実」は、
「淫花」と同時期に通信販売されていた豪華写真集です。
まずは自販機本に掲載されていた広告が以下です。
“土曜漫画創刊25周年記念”、
“石垣章 作品集”という文字が目を引きます。
ちなみに、“土曜漫画”について、
「ポルノ雑誌の昭和史」(川本耕次・著 ちくま新書 2011年10月10日発行)に、
以下の記述がありました。
すこし長いですが引用します。
“ 1977年くらいから「Do企画」というブランドが東京雑誌販売グループに登場する。
会社名としては「土曜漫画新社」。
「新社」というのは潰れた会社を再建する時に使われるものなんだが、
ここはもともと名門のエロ実話誌を出していた土曜通信社という会社で、
1960年代には業界でも名門だった。
「土曜漫画」というのは隔週刊の週刊誌です。
ロス疑惑を起こす前の三浦知義が在籍していた事もある。
それが倒産して、東販・日販の雑誌コードを売ってしまう。
その頃は雑誌コードが高値で売れたわけです。
口座を失っても編集者が残ったようで、
そこで雑誌コードの要らない自販機業界に流れ込んで来たわけだ。”
また、「Do企画」の自販機本について、
老舗のエロ本屋さんらしく、
造りはしっかりしているという内容が続きます。
さらにそのあと、
本作「奇妙な果実」についての記述もありました。
以下です。
“ もともと暗黒舞踏とか撮っていた売れないムービーあがりの石垣章は、
この頃には自販機業界を越えて活躍する有名カメラマンになっていた。
「淫花」は駆け出しのおいらの写真まで入っていて寄せ集めの感が強いが、
「奇妙な果実」はほとんどのページが見開きで構成されたSM写真集で、
完成度が高い。時期的にも自販機ポルノの末期にあたり、
あるいはそこが、自販機ポルノが辿り着いた、ひとつの頂点だったのかも知れない。”
あらためて広告をみますと、
「淫花」も「奇妙な果実」も限定5000部はおなじですが、
「淫花」が送料込みで12000円なのに対し、
「奇妙な果実」は定価18000円(送料1000円)。
とんでもない豪華さです。
「淫花」は商業的に厳しかったのではないかと思いますが、
それ以上に、本作「奇妙な果実」は苦戦したのではないでしょうか。
例によって、
トップ画像は表紙です。
「奇妙な果実」の本体はケースに入っており、
本体の表紙です。
そして記事のあとに載せたのが、
本体の裏表紙です。
正確にいいますと、
本体にさらにカバーがかけられており、
本体自体は白地ですが、
カバーに黒のシルエット模様が描かれています。
シルエットが無い部分は無色透明なので、
本体の白地が透けて見えます。
さて、
内容ですが、とても前衛的な写真が続いています。
およそ自販機本から派生した写真とは思えません。
「淫花」は、
自販機本のカットを大きくしたような印象でしたが、
本作「奇妙な果実」は、
カメラマンの石垣章氏が、自販機本でもカメラマンをやっていたというだけで、
自販機本臭さをほぼ感じません。
たしかに、
女性モデルが登場して、緊縛もされていますが、
ヒワイさよりも、
アートっぽさをまず感じました。
女性のおっぱいや、
ともすればマンコが見たかった自販機本の読者が購入したとすれば、
落胆してしまうでしょう。
値段が高いのでなおさらです。
裏表紙のあとに、
中身のページをいくつか載せました。
自販機本をつくっていた川本耕次氏に、
“自販機ポルノが辿り着いた、ひとつの頂点だったのかも”、
とまで言わしめるわけですから、
写真集としてのレベルは相当なものだったと思います。
しかし、繰り返してしまいますが、
商業的に成功したかどうかは疑問です。
「奇妙な果実」の話からすこし外れますが、
自販機本全般について、
私が思っていることを最後に書きます。
自販機本を振りかえる特集が、
たまに雑誌に掲載されているのを見かけます。
そのときはかならず、
伝説の自販機本として、
「Jam」「HEAVEN」が大々的に取り上げられます。
話題になりましたし、
のちのメディア人に与えた影響も大きいと思いますが、
自販機本ということでまず「Jam」「HEAVEN」が出てくることに、
私は違和感があります。
そんなに数は多くないですが、
このブログでも自販機本を取り上げてきました。
いつも思うのは、
自販機本のメインはエロだということです。
「Jam」「HEAVEN」は、
革新的で前衛的だったとは思いますが、自販機本のなかでは変化球です。
空中でセックスしたり、
山の中でからんだり、勝手に大学の構内に入って半裸になったりと、
ひたすらエロを追求するのが、
自販機本の王道だと思いますし、その姿勢に敬意を持ちます。
「Jam」や「HEAVEN」を強調するあまり、
自販機本の本来の姿が、後世にきちんと伝わらないのではないかと、
ほんとうに余計で老害的な感想を抱いています。
アバンギャルドでカッコいい「Jam」「HEAVEN」は、
自販機本のきわめて一部の側面でしかなく、
手を変え品を変え、
愚直にエロを実現している自販機本があくまでメインだったと思っています。
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コメント
コメント一覧 (11)
アリス出版の広告には「淫花」と「奇妙な果実」の二つが並んでいましたから。「淫花」ときたら次は「奇妙な果実」です。(笑)
「淫花」を取り上げられた際、土曜漫画新社は?とぼかして書かれていたのは、「奇妙な果実」の記事を予定されていたからだったんですね。すみませんでした。
しかし、二冊ともお持ちとは恐れ入りました。
後々、「淫花」の方は8000円に値引きされていたことをコメントに書きましたが、その時でも「奇妙な果実」の方は値段そのままです。
「淫花」は如何に写真を厳選して豪華に作っても、自販機本写真集のために撮影した写真という枠は超えられない。
「奇妙な果実」は石垣章の代表作の一つですし、自販機本制作のための写真でもないので、そうした芸術性の違いというのが後々の値段にも表れているのではと思います。
JamやHEAVENは、自販機本をサブカルとして捉え説明する時は、わかりやすいネタではあるんですけど、自販機本って何?と言ったら傍流も良いところですよね。余興と言っても良い。何でもありが自販機本、その中のひとつにこういう形の何でもありもありました、程度のものだと思います。
モーリス輪島
が
しました
編集プロとそうした出版社の実質的な違いって、本の編集制作部隊には全然違いがなくて、本を売るための営業部隊があるかないか程度なんですけど、取次口座の有無は会社としての信用度の違いとも言える。
出版不況と言われる今だと大分違うのかもしれませんが、出版社を起業しましたので宜しくと言う様な形で簡単に口座を設けてくれることはなかったそうで、企業としての信用度だけでなく、エロ本しか発行していない出版社は相手してくれなかったと聞きます。だから白夜書房も口座を設けてもらう目的が半分で、当初はエロとは関係ないものを作っていたりしたとか。
口座を持っていない出版社は、口座を借りる形で本を流通させるしかなかったわけですから、口座の売り買いなんて、相撲の年寄株みたいですけど、さもありなんです。
モーリス輪島
が
しました
モーリス輪島
が
しました